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タデウシュ・カントル生誕100周年

過去のイベント, 演劇・ダンス


Fot. Mariusz Cieszewski

タデウシュ・カントル生誕100周年記念レクチャー&シンポジウム

成就したカントルの夢

旧発電所の建物とそれを覆うように増築された現代的構造物のシュルレアリスティックなコンビネーション――クラクフに建つそれはタデウシュ・カントル博物館「クリコテカ」の新しい拠点だ。

「自分の死後、クリコテカを遺したいと思っている。(…)ビジュアルな博物館だ…。見せるということにかけて私はスペシャリストなのだ」――世界で最も有名なポーランド人芸術家の一人、タデウシュ・カントルはこのように言った。演出家、画家、作家、舞台美術家、グラフィックデザイナーであり、数々の芸術的マニフェストを表明し、舞台表現の新たな形態を模索し続けた人物でもある。

彼の夢は実現した。クリコテカ――すなわちタデウシュ・カントル芸術記録センターであり劇団クリコット2の生けるアーカイブ――はこの秋一般公開された。クラクフのポドグージェ地区にあった19世紀に由来する古い発電所がそれに姿を変えたのだ。建築家集団IQ2 Konsorcjumのメンバーらは、この歴史的建造物上部に3本の柱脚に支えられた地上13メートルの錆びた箱のような物体を増築した。2世紀前に建てられた明るい色調のシンメトリックな建物が、非現実的な印象を強く与えるこの新しい構造物に飲み込まれる形となっているのだ。その存在はヴィスワ川の左岸を若返らせただけでなく、廃れかけた産業時代の遺物を現代に蘇らせることにも一役買ったのだった。

タデウシュ・カントルが制作したインスタレーションの中でも最もよく知られたものの一つで「造形美術シンポジウム・ヴロツワフ’70」において展示された高さ9メートルの椅子を念頭に、新クリコテカを巨大なテーブルと称する批評家らもいる。この椅子は41年の時を経て2011年に再びヴロツワフのジェジニチャ通りに出現した。椅子もクリコテカも、まるで周辺の空間を矮小化し現実を嘲笑うかのようだ。

しかしこの建物が重く錆びついたようなのは外見だけである。このように見えるのはガラスとコンクリートでできた建物本体を取り囲む金属製の格子のためだ。至近距離から見ればクリコテカの中庭上空に渡されている巨大な鏡、つまり「橋の腹」とも「テーブルトップ」ともたとえられる表面を覆うメタリックな板面が軽快な印象を与える。来館者は「生きた劇場の中のアーティスト」である自分自身を見ることになるのだ。同博物館は、産業遺産を蘇生させた施設として知られその最も優れたものとされるロンドンのテート・モダン、マドリードのカイシャフォルムに匹敵するプロジェクトである、とWebサイトcricoteka.pl上で自ら評価している。

Fot. Mariusz Cieszewski

カントルの遺志どおり、床面積700平方メートルのこの博物館では主に彼の舞台作品に関連した物品が展示されているが、建物のそこかしこで彼自身のパフォーマンス活動の一端を知ることができる。クラクフのポドグージェ地区にそびえるこの巨大な建物は、1980年創設のカノニチュナ通りのクリコテカやシェンナ通りの彼の家からあふれ出てきた記念品を収めただけのように思われるかもしれないが、実際はそれだけではないのだ。

クリコテカの大部分を占める常設展「コレクション」は、カントルの演劇活動が残した膨大な記録・物品の集合体だ。そこには彼の舞台で使われた小道具、舞台美術の断片、彫刻などのほか、写真や記録映像も揃っている。カントルの創作に関する知識を各段階に従って整理すること、数々のアイコン的公演やそれぞれの理念、それらの作品に向けられた最も重要な発言の引用を紹介することがこの展示の目的なのである。

Fot. Mariusz Cieszewski

コレクションのほか、学芸員ヨアンナ・ジェリンスカの制作による現代アート展「二度あるものはない」も来館者の関心を集めている。この展示はカントル以降のパフォーマンスアート界での事象を紹介するもので、中でもパヴェウ・アルトハメルの作品を紹介した部分ではカントルの創作との並列性を見出すことができる。アルトハメルはワルシャワの文化科学宮殿を金色にラッピングするなど公共空間でのプロジェクトで知られるが、カントル同様、自らアーティストの役割を離れて多発性硬化症患者との陶芸ワークショップを実施するなどの活動を行っている。「二度あるものはない」はマイケル・ポートノイ、ブラザーズ・クエイ、ギイ・ドゥ・クォンテ、オスカル・ダヴィツキ、カントル自身、あるいはパウリーナ・オウォフスカといった様々なアーティストの作品をコラージュしたインスタレーションの形態をとっている。カントルが「わが貧しき空想の小部屋」と名付けたこの施設全体は、クラクフにある各種博物館の中でも最も大規模で最も現代的な建物の中に収まっているのだ。

「クラクフは保守的、というのが広く支配的なステレオタイプですが、まさにこの地に、いち早くMOCAK(クラクフ現代アート美術館)が、そして今度はクリコテカが開館しました。このようにしてクラクフは現代アートの首都へと成長を遂げつつあるのです」――博物館のオープニングに際し文化大臣のマウゴジャータ・オミラノフスカ教授はこう述べ、同時に生誕100周年にあたる2015年をカントル年とすることを宣言したのだった。

カロリーナ・コヴァルスカ

www.polska.pl

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