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『人形』翻訳の関口時正さん、読売文学賞受賞

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2018年2月1日、第69回読売文学賞が発表され、2017年11月に発表されたボレスワフ・プルス作『人形』を翻訳した関口時正さんの受賞が決まりました。

原題は『Lalka(ラルカ)』といい、ポーランドで1887年から1889年にかけて新聞連載されていた小説が1890年に書籍化されたものです。現代でも、本国でこの小説を知らない人はいないほどで、学校の課題図書になることもあります。本作はこれまで20以上の言語に翻訳されてきました。

今回の受賞に際し、作家の池澤夏樹さんが以下のように選評を発表しました。(出典:読売新聞https://info.yomiuri.co.jp/contest/clspgl/detail/3584.html

ヨーロッパの小説は十九世紀に一つの完成に達した。ディケンズやスタンダール、トルストイなどの、国民文学にして世界文学である傑作が次々に生まれた。

 それらと同じレベルの名作なのに日本への紹介が遅れたのが、イタリアのマンゾーニ『いいなづけ』であり、ポーランド語で書かれた本書である。

 ボレスワフ・プルスの『人形』は全一巻、千二百ページを超える大著だ。そしてこれを読む喜びは『デイヴィッド・コパーフィールド』や『パルムの僧院』を想起させる。話の流れに身を任せて読める安定感が正に十九世紀。

 主人公はヴォクルスキという才覚ある男で、ワルシャワで雑貨屋をデパートにまで拡大する一方で、貴族階級の無情の美姫に恋をし、更に国外遠くへ謎めいた旅に出る。これが一八七八年ごろのことで、その間に彼の親友ジェツキの一八四八年あたりの兵士としての冒険の回顧が何度となく挟み込まれる。

 文体は平易で、地名やモノの名がたくさん書かれ、動詞も具体的で、抽象論に走ることがない。初出が新聞連載だったのがうなずける。それでいて長い構成に破綻がない。

 登場人物の数が多く、彼らの行動は詳述されるが、その心理の奥には踏み込まない。社会というものの存在感が強く、東のロシアと西の列強に挟まれたポーランドの悩みが人々を通じて描写される。

 訳文は達意で、少しだけ古風で、正に十九世紀の小説を読んでいるという実感を保証するものだ。

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読売新聞 2018年2月11日付 朝刊より

なお、日本語版は未知谷から出版されており、この作品は同出版社の「ポーランド文学古典叢書」第7巻目にあたります。

<ポーランド文学古典叢書>

第1巻 ヤン・コハノフスキ『挽歌』(関口時正訳、2013年)

第2巻 アダム・ミツキェーヴィチ『ソネット集』(久山宏一訳、2013年)

第3巻 アダム・ミツキェーヴィチ『バラードとロマンス』(関口時正訳、2014年)

第5巻 S・アン=スキ/ヴィトルト・ゴンブローヴィチ『ディブック/ブルグント公女イヴォナ』(西成彦編、赤尾光春、関口時正訳、2015年)

第6巻 スタニスワフ・イグナツィ・ヴィトキェーヴィチ『ヴィトカツィの戯曲四篇』(関口時正訳、2015年)

第7巻 ボレスワフ・プルス『人形』(関口時正訳、2017年) 同作は2017年度第69回読売文学賞の研究・翻訳賞受賞

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