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アンジェイ・ヤキモフスキ監督インタビュー

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fot. Maciej Komorowski

現代ポーランドを代表する気鋭の映画監督の一人として、国内外から高い評価を得ているアンジェイ・ヤキモフスキ監督。ポーランド映画祭2014 で上映された「イマジン」は観客から圧倒的な支持を受け、日本でのファン層を広げた。

6月18日に開幕したEUフィルムデーズ2016では「イマジン」に加え、特別プログラムとして「アンジェイ・ヤキモフスキの世界」も上映、好評を博した。映画のプロダクト・デザイナーでもある夫人のエヴァ・ヤキモフスカさんと一緒に来日した監督にお話をうかがった。

旅先での妻との何気ない語らい。
それが最初のアイディアを得たきっかけ

――ポルトガル・リスボンにある視覚障害者のための施設を舞台に展開する「イマジン」。ポーランド映画としてはかなりユニークな設定だと思いますが、この映画を撮ることになったきっかけは?

ヤキモフスキ 最初の構想が浮かんだのは1990年代末。映画にも登場するカフェで妻と雑談している時でした。その時点では視覚障害者を主人公にするというアイディアはまだありませんでしたが、“港と船”というものを強くイメージしました。リスボンを舞台にしたのは、思い描いたイメージを体現できるような特殊な地形の港があったからです。

――最初の構想から10数年を経て映画を製作することになったのはどういう理由でしょう?

ヤキモフスキ 単なる“アイディア”では映画を作るには不十分です。シナリオを構築するにはアイディア以上の何かが必要となります。今回の場合、第二のアイディアとなったのが「視覚障害者の物語」ということ。直接的なきっかけはレイ・チャールズやスティービー・ワンダーについての記事を読んだことですが、実は視覚障害者については以前から興味はありました。自宅の下階の住人が白い杖をつきながら世界中を旅するような人で印象に残っていたのです。

――主人公のイアンは、指や舌を鳴らすことで起こる反響から周囲の環境を把握し、白杖なしで移動する反響定位(エコーロケーション)というテクニックを習得しています。モデルとなる人物はいたのでしょうか?

ヤキモフスキ シナリオを書き始めた当初、イアンは全くの虚構の人物でしたが、書き進めている途中で、反響定位の技能者であったベン・アンダーウッドという人物について知りました。書き始めた後でモデルとなるような人が見つかったというわけです。イアンにはベンのキャラクターを投影していますが、イアン=ベンというわけではありません。例えばイアンは靴音、指打ち、舌打ちの3つで位置を確かめますが、ベンは温暖な気候の地に住んでいたのでいつも裸足。靴を鳴らすことはなかったといいます。

プロデューサーも兼任することで
「自分が作りたい映画」を作ることができる

――長編劇映画デビュー作Zmruż Oczy(目を細めて)は03年、第20回東京国際映画祭出品策でもあるSztuczki(トリック)は07年、イマジンは12年の製作です。4~5年に1本というゆったりしたペースで作品を発表していらっしゃる理由は?

ヤキモフスキ 私は単に演出をするだけでなくシナリオも書きますし、プロデューサーとして資金集めも行います。それによって私は「プロデューサーが望む映画」ではなく、「自分が作りたい映画」を作ることができるのです。様々なことに携わるため相応の時間が必要となり、そのペースがたまたま4、5年だったということです。

――現在、新作を準備中とのことですがどのような作品なのでしょうか?

ヤキモフスキ 舞台となるのは現代のポーランド。19歳の青年とその母親が主人公で、貧しさゆえ集合住宅を追い出されホームレス状態になってしまった二人の運命を描きます。デモ行進と反対勢力の衝突の様子などを収めたドキュメンタリー映像も効果的に挿入します

――日本ではポーランド映画というと、暗い、重いといったイメージを持たれがちですが、ヤキモフスキ監督の作品はとても色が“豊か”だと感じます。また、ハッピーエンドとはいえないような結末を迎えても、どこか希望を感じさせるような雰囲気が漂います。Optimistic(楽観的)と評されることもある作風には、プロダクト・デザイナーを務める夫人のエヴァさんが果たす役割も大きいのでしょうか?

ヤキモフスキ プロダクト・デザイナーである妻は、映画の色彩に関する責任者です。それと同時に彼女は、シナリオを描くうえでもいろいろと助けてくれます。文字どおりの“色”について気を配っているだけでなく、感覚的、比喩的な意味合いでの色合いを明るくしてくれるのが妻だといえるでしょう。ただし次回作はこれまでの作品ほど明るくはないと思います。すべて順調に運べば来年の4月か5月ごろに完成するはずなのでご期待ください。

(取材・文 Mihoe Sano)

「イマジン」のストーリー、キャストなどの詳細は:
映画イマジンオフィシャルサイト http://mermaidfilms.co.jp/imagine/introduction.html
EU フィルム デーズ http://eufilmdays.jp/

Andrzej Jakimowski (アンジェイ・ヤキモフスキ)

映画監督、脚本家、プロデューサー。1963年ワルシャワ生まれ。ワルシャワ大学で哲学を学んだ後、カトヴィツェ映画学校で映画演出を学ぶ。短編映画やドキュメンタリー映画製作を経て03年にZmruż Oczy(目を細めて)で長編劇映画デビュー。07年のSztuczki(トリック)に続きImagineは長編3作目。いずれも国内外の映画祭で数々の賞を受賞している。