ポーランドについて

アンジェイ・ワイダ

Andrzej Wajda

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アンジェイ・ワイダ Andrzej Wajda

 1926年3月6日、スヴァウキ県(現在はポドラシェ県)スヴァウキ生まれ。母親は学校教師、父親は陸軍将 校。父は1942年に、ソ連の内務人民委員部(NKVD)によりほかのポーランド軍将校や警官、国境警備員、聖職者らと共に銃殺された。この事件は後に現 場近くの地名を採って「カティンの森事件」あるいは「カティンの森の虐殺」として知られるようになり、近年ワイダ自身が『カティンの森』(07)として映 画化したことは周知の通り。同1942年、十代半ばにしてワイダは国内軍兵士となり、反ナチ・レジスタンス活動に従事する。
 

 戦後、画家を目指してクラクフの芸術アカデミーで学ぶ。続いてウッチ映画大学に入学。アレクサンデル・フォルト監督作『バルスカ通りの五人組』(54、 未)の助監督を務めた後、ナチス占領下のポーランドを舞台に若者たちによる反ナチ闘争および(共産党系の)人民軍への加担を描いた『世代』(54)で長編 監督デビュー。 この作品には後のワイダ作品にも起用されるタデウシュ・ウォムニツキ、ズビグニェフ・ツィブルスキ、タデウシュ・ヤンチャルといった当時 の若手俳優が早くも顔を揃えている。また、ロマン・ポランスキーも重要な役柄で出演した。続いて監督した『地下水道』(56)と『灰とダイヤモンド』 (58)で世界的な注目を浴びる。
 

 以後1960年代を通じ、超現実的な象徴性に満ちた『ロトナ』(59、未)、若者世代の生態描写を試みた『夜の終りに』(60)、ステファン・ジェロム スキの原作に基づく歴史大作『灰』(65、Vのみ)、『灰とダイヤモンド』の原作者イエジー・アンジェイェフスキの前衛的な小説に基づく『天国の門』 (68、未)といった野心作を発表。  

 1967年に気に入りの俳優ツィブルスキが列車事故で死去したのをきっかけに、映画製作の舞台裏を描いた個人的で内省的なワイダ版『8 1/2』(フェデリコ・フェリーニ、63)ともいうべき『すべて売り物』(68、Vのみ)を監督。ヤヌシュ・グウォヴァツキの原作・脚本に基づく諷刺劇 『蝿取り紙』(69、Vのみ)を経て、1970年以後はホロコーストを生き延びた作家を主人公としたタデウシュ・ボロフスキの小説に基づく『戦いのあとの 風景』(70、Vのみ)、一人の女性をめぐって張り合うやもめの兄と病弱な弟の姿を描いたヤロスワフ・イヴァシュキェヴィチの小説に基づくテレビ映画『白 樺の林』(70)、象徴性に満ちた描写で詩人と農民娘の婚礼を描いたスタニスワフ・ヴィスピャンスキの戯曲に基づく『婚礼』(73)、19世紀ポーランド における資本主義の発生を描いたヴワディスワフ・スタニスワフ・レイモントの小説に基づく『約束の土地』(74)、『白樺の林』と同じくイヴァシュキェ ヴィッチの小説を原作とした『ヴィルコの娘たち』(79)といった作品を発表、いずれも高い評価を受けた。
 

 アレクサンドル・シチボル・ルィルスキのオリジナル脚本に基づき、スターリン主義時代と現代を交差させながら、1950年代に労働英雄に祭り上げられた 一人の男の盛衰を通してポーランド現代史を貫く政治の闇を突いた『大理石の男』(76)は、カンヌ国際映画祭国際映画批評家連盟賞を受賞した。1970年 代末期には、英国人俳優ジョン・ギールグッドを主演に迎えた野心作『ザ・コンダクター』(80、Vのみ)を監督。
 

 1980年代に入り、当時勃興していた 独立自主管理労働組合“連帯”による民主化運動をいち早く作劇に取り込み、同運動を先導したレフ・ワレサ(ヴァウェンサ)を自身として特別出演させた、 『大理石の男』の続編あるいは姉妹編にあたる実験的な大作『鉄の男』(81)を発表。この作品はカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞したが、“連帯”へ の関与が原因となってワイダの製作プロダクションはポーランド政府により解散に追い込まれた。また、1978年より務めていた映画人協会会長も辞任。
 

 以後はフランスとの合作映画が増え、出演者にも西欧の俳優が連続的に起用されるようになる。たとえばフランス人俳優ジェラール・ドパルデュー主演の仏= ポーランド合作映画『ダントン』(83)、ドイツ人女優ハンナ・シグラ主演の仏=ポーランド合作映画『ドイツの恋』(83)、ランベール・ウィルソンやイ ザベル・ユペールらフランス人俳優を大々的に起用したフランス映画『悪霊』(88)といった作品である。そのほか、タデウシュ・コンヴィツキが原作と脚本 を担当した純粋なポーランド映画『愛の記録』(86)も発表した。1981年から1989年にかけ、レフ・ワレサ(ヴァウェンサ)率いる“連帯”顧問会議 の一員となる。
 

 東欧革命によるポーランド共和国誕生以後は、実話に基づくポーランド=独合作映画『コルチャック先生』(90)、ポーランド=英=独=仏合作映画『鷲の 指輪』(92)、アンジェイェフスキの小説に基づくポーランド=独=仏合作映画『聖週間』(95)、アダム・ミツキェヴィチの叙事詩に基づくポーランド= 仏合作映画『パン・タデウシュ物語』(99)といった作品を発表。アレクサンデル・フレドロの戯曲に基づく喜劇『仕返し』(02、未)には、ロマン・ポラン スキーが主演した。現時点における最新作は、『大理石の男』『鉄の男』の主演女優クルィスティナ・ヤンダを久々に主演に迎えたイヴァシュキェヴィッチの小 説に基づくポーランド映画『菖蒲』(09)。現在、2013年公開予定でレフ・ワレサ(ヴァウェンサ)の伝記映画『ヴァウェンサ』を製作中。1989年か ら1991年にかけて上院議員を、1992年から1994年にかけては大統領(ヴァウェンサ)直属の文化評議会議長を務めた。
 

 また、1959年にマイケル・V・ガッツォ『帽子いっぱいの雨』で初めて舞台演出を手がけた。以後、シェイクスピア『ハムレット』、ウィリアム・ギブソ ン『二人のシーソー』などを1960年代前半に演出。1970年代以後もドストエフスキー『悪霊』やプシブィシェフスカ『ダントン裁判』など、数多くの舞 台劇を演出。この二作品は後に自身の演出で映画『ダントン』(83)および『悪霊』(88)として結実した。1989年には、日本でドストエフスキーの小 説『白痴』に基づく『ナスターシャ』を演出。『ナスターシャ』には、坂東玉三郎がムイシュキン公爵とナスターシャの一人二役で主演した。さらにこの作品も 1994年に同じ監督・主演コンビで映画化された。
 

 大の親日家としても知られている。1987年に、第三回京都賞の精神科学・表現芸術部門を受賞。このときの受賞基金を使って1994年、クラクフに「日 本美術・科学技術センター」を設立。1996年には高松宮殿下記念世界文化賞の演劇・映像部門を受賞、神戸映画祭で講演をした。
 

 また、2002年に映画監督ヴォイチェフ・マルチェフスキと共同でポーランドに映画学校「アンジェイ・ワイダ映画マイスター学校」を創設。2000年にはオスカー特別名誉賞を受賞。2006年にはベルリン国際映画祭で名誉金熊賞を受賞した。

「世代」(1954)

「地下水道」(1956)1957年 カンヌ審査員特別賞

「灰とダイヤモンド」(1958)1959年ヴェニス映画祭 国際批評家連盟賞  1962年デヴィッド・セルズニック賞

「夜の終りに」(1960)

「二十歳の恋」(1962)

「すべて売り物」(1969)

「戦いのあとの風景」(1970)1971年ミラノ ゴールデングローブ賞

「白樺の林」(1970)1971年モスクワ国際映画祭金賞受賞

「婚礼」(1973)

「約束の土地」(1974)1975年ポーランド劇映画祭「金獅子」賞  1975年モスクワ映画祭金賞/1976年アメリカ アカデミー賞ノミネート

「大理石の男」(1976)1978年カンヌ映画祭 批評家連盟賞

「ヴィルコの娘たち」(1979)1980年アメリカ アカデミー賞ノミネート

「鉄の男」(1981)1981年カンヌ国際映画祭 「パルムドール」賞/ 1982年アメリカ アカデミー賞ノミネート

「ダントン」(1982)1982年フランス ルイ・デリュック賞

「ドイツの恋」(1983)

「愛の記録」(1986)

「悪霊」(1987)

「コルチャック先生」(1990)

「鷲の指輪」(1992)

「ナスターシャ」(1994)

「聖週間」(1995)1996年ベルリン 銀熊賞

「パン・タデウシュ物語」(1999)

「仕返し」(2002)

「カティンの森」(2007)2008年アメリカ アカデミー賞ノミネート/2008年ヨーロッパ・フィルム・アカデミー Prix d’ Excellence

「菖蒲」(2009)/第59回ベルリン国際映画祭アルフレード・バウアー賞受賞

「ワレサ――連帯の男」(2013)――2014年春日本公開予定

 


 
2011年3月11日に発 生した東日本大震災に際して、アンジェイ・ワイダは、日本人の被災者に励ましのメッセージを送った。

 

悲観しない日本人を尊敬 悲劇、苦難乗り越え生きよ 日本の友人たちへ。

 このたびの苦難の時に当たって、心の底からご同情申し上げます。深く悲しみをともにすると同時に、称賛の思いも強くしています。恐るべき大災害に皆さんが立ち向かう姿をみると、常に日本人に対して抱き続けてきた尊敬の念を新たにします。その姿は、世界中が見習うべき模範です。

 ポーランドのテレビに映し出される大地震と津波の恐るべき映像。美しい国に途方もない災いが降りかかっています。それを見て、問わずにはいられません。「大自然が与えるこのような残酷非道に対し、人はどう応えたらいいのか」

 私はこう答えるのみです。「こうした経験を積み重ねて、日本人は強くなった。理解を超えた自然の力は、民族の運命であり、民族の生活の一部だという事実を、何世紀にもわたり日本人は受け入れてきた。今度のような悲劇や苦難を乗り越えて日本民族は生き続け、国を再建していくでしょう」

 日本の友人たちよ。

 あなた方の国民性の素晴らしい点はすべて、ある事実を常に意識していることとつながっています。すなわち、人はいつ何時、危機に直面して自己の生き方を見直さざる
をえなくなるか分からない、という事実です。

 それにもかかわらず、日本人が悲観主義に陥らないのは、驚くべきことであり、また素晴らしいことです。悲観どころか、日本の芸術には生きることへの喜びと楽観があふれています。日本の芸術は人の本質を見事に描き、力強く、様式においても完璧です。

 日本は私にとって大切な国です。日本での仕事や日本への旅で出会い、個人的に知遇を得た多くの人々。ポーランドの古都クラクフに日本美術・技術センターを建設するのに協力しあった仲間たち。天皇、皇后両陛下に同行してクラクフを訪れた皆さんは、日本とその文化が、ポーランドでいかに尊敬の念をもって見られているか、知っているに違いありません。

 2002年7月の、あの忘れられないご訪問は、私たちにとって記念すべき出来事であり、以来、毎年、私たちの日本美術・技術センターでは記念行事を行ってきました。

 日本の皆さんへ。

 私はあなたたちに思いをはせています。この悪夢が早く終わって、繰り返されないよう、心から願っています。この至難の時を、力強く、決意をもって乗り越えられんことを。

 ワルシャワより
 アンジェイ・ワイダ
(共同通信)

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アンジェイ・ワイダ DVD-BOX

ポーランド最大の巨匠アンジェイ・ワイダの<抵抗三部作>、DVD-BOXにて遂に刊行!苛酷な運命に翻弄された第二次大戦終結前後のポーランド。反ナチ闘争を軸に共産主義と愛国主義が対立する、激動の一時代を見据えた三部作。
[ドラマ]

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原題:     POKOLENIE (1954)/KANAL (1957)/POPIOL I DIAMENT (1958)
製作国: ポーランド     言語: ポーランド語     字幕: 日本語字幕

【世代】ナチス・ドイツ占領下のワルシャワ近郊。仲間達とドイツ軍の石炭を盗んでいた青年スタフは、友人が殺されたのをきっかけに見習工として工場で働くようになる。ある日スタフは、抵抗運動についての演説を初めて聞き、感化される。演説していた女性闘志ドロタに惹かれるまま、スタフはレジスタンス活動に参加してゆく……。 

【地下水道】第二次大戦末期の1944年9月、ワルシャワの街は度重なる爆撃で壊滅寸前であった。武装蜂起した対独レジスタンスも、絶望的な状況に追い込まれていた。ドイツ軍に包囲された中隊は、地下水道へと逃げ込む。暗闇に支配された地下水道の中、やがて隊員たちは散り散りになってゆく……。 

【灰とダイヤモンド】1945年ワルシャワ。レジスタンスの生き残りである青年マチェクは、反ソ派テロリストとして活動していた。地区委員長暗殺の指令を受け、銃撃を実行したが、誤って別人を殺してしまう。任務を完遂すべく、標的が滞在するホテルに潜む。その夜マチェクは、バーで働く美しい女、クリスティーナと出会い、恋に落ちる……。

発売日:2011/02/26
紀伊國屋書店  http://forest.kinokuniya.co.jp/ItemIntro/650060

 


「カティンの森」   

アンジェイ・ワイダ監督

2008年アカデミー賞外国語映画賞ノミネート作品
2008年ベル リン国際映画祭正式出品作品
上映 http://movie.walkerplus.com/schedule/mv45221/

 


 

菖蒲 (しょうぶ) Tatarak  日本初公開

監督:アンジェイ・ワイダ ポーランド 2009年 85分 ポーランド語(日本語・英語字幕)

東京  5/29 (土) 17:00  6/2 (水) 19:00   東京国立近代美術館フィルムセンター
福岡 6/15 (火) 14:00  6/20 (日) 14:00    福岡市総合図書館



 

『カティンの森』に続くワイダ監督の最新作。医師夫人マルタは不治の病にかかっているが、それを知ら ない。若いボグシに魅了され、川辺で逢引きするが……。この物語と同時進行で、主演女優ヤンダの実生活に起こった悲劇が物語られていく。

http://www.eufilmdays.jp/film.php?id=17

 


 

ポーランドの巨匠監督、ワレサ元大統領描く最新作は「私の義務」

2013年 08月 15日 16:59 JST

[ワルシャワ 14日 ロイター] – 「灰とダイヤモンド」や「カティンの森」など数々の名作で知られるポーランド映画の巨匠、アンジェイ・ワイダ監督。アカデミー名誉賞も受賞し、現在87歳になるワイダ監督だが、ある作品を撮るまでは引退できないと感じていたという。それが、同国のワレサ元大統領(69)を描いた最新作「Walesa. Czlowiek z nadziei(原題)」だ。

今月28日に開幕するベネチア国際映画祭の非コンペティション部門に出品される本作は、冷戦終結の立役者の1人である元大統領の苦悩と功績を描いている。世界的にはノーベル平和賞受賞者として知られるワレサ氏だが、民主主義を享受するポーランド国内では、その評価に衰えが見られるという。

ポーランドの首都ワルシャワにあるスタジオでロイターのインタビューに応じたワイダ監督は、ワレサ元大統領の映画を撮ることは「自分の義務」だと感じたとし、「政治に興味を持たない若い世代がこの映画を見て、母国のために何かすべきだと思うかもしれない」と期待を示した。

ワレサ氏は造船所で働く電気技師から自主管理労働組合「連帯」のリーダーとして頭角を現し、大統領にまで上り詰めた人物。ワイダ監督は「この映画が必要なのは私やワレサではなく、ポーランドという国家だ」と語った。

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